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五反田怪団ザ・ベスト


ひと月以上まえの観劇記録だけど。 『五反田怪団ザ・ベスト』@アトリエヘリコプター、6月7日ソワレ。


五反田団のレパートリィは、オフセット感を手段とするラインとオフセット感自体を目的とするラインの、だいたい2つに分かれる感じ。今回のは後者。前田さんの余技、もしくは手すさび(というと語弊があるけれど)でどこまでエンターテイメントの完成度を上げられるかという試み。芝居というよりはトークショーみたいな風合いの空気で、演者は終始、観客に向かって「怪談らしきもの」をする。観客の目先を微妙にずらし続けるその手並みは見事。


だいたい笑えるんだけど、ときどき、ちょっと怖かったり。そもそも怪談っていうフォーマットは「緊張と弛緩」を織りこみやすい形であることに、あらためて思いをいたしたり。前田さんの話術と吉田さんの怪演、客席を巻き込んだ演出、全暗のおっかなさ、・・・みたいな要素は総じてハズれることなく。・・・ただ、講談的なものと演劇的なものとをくっつけることの挑戦については、もともと五反田団のお芝居は講談的だったりするので、それほど際立ってない感じ。ああ「いつもの五反田団だね」という。


こう書くと「マンネリ化してつまらないのか」と言われてしまいそうだけれど、けっしてそんなことはなく、というか「マンネリ化」は事実だけれど、確実にバットに当てて走者を進めることを実現している点は、本当に評価されなくてはいけないと思う。わたしのお気に入りである別の劇団は果敢にチャレンジし続けているものの、空振り三振が続いていたりするし。


ハレとケでいくと、劇場を長らく包んでいたハレの覆いを、内側からじわじわ溶かしていくパフォーマンスなのだと思う。その点ではいまだ、たしかにチャレンジングだと思う。・・・なんというか、あまりにもあっけなく「ケからハレへの回帰」が始まった感があるし、ここ数年、演劇界一般的に。


一方で、五反田団ではスペクタクル感が微分されつくしてはいるけれど、いわゆる「見世物小屋感」は満載だったりする。前田さんの話術とか吉田さんの怪演は、まさに「異形」で、古びた工場っぽい会場で、そういうのを見ることは気持ちいいけど、ちょっと怖かったりする。身体の軸がちょっと崩れている吉田さんの身ぶりや、言葉の繋ぎがいつもバイパスをとおしてるっぽい前田さんのしゃべりは、衝撃をもたらす違和感に満ちている。「アンチスペクタクルの見世物小屋」っていうことなのかも。


ダコーザ・ナッシェ・コーザ。

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